「トム・ソーヤーの冒険」(トウェイン)①

エンターテインメントてんこ盛りの面白さ

「トム・ソーヤーの冒険」
(トウェイン/柴田元幸訳)新潮文庫

勉強嫌いの少年・トムは、
学校の中では
多くの男友達と腕白ぶりを発揮し、
学校が終わると
町の浮浪児・ハックとともに、
数々のいたずらをしでかす毎日。
ある夜二人が墓場に忍び込むと、
あろうことか
殺人事件を目撃してしまう…。

世界で最も親しまれている
児童文学の一つ。
序文で述べられているように、
本作品は作者・トウェインが
(執筆年1876年の)「三、四十年前」に、
「大半は実際に起こった出来事」を
「少年少女に愉しんでもらうことを
意図して」書いたものです。
面白いこと請け合いです。
その理由は、いくつもの
エンターテインメントの要素を
思いっきり盛り込んだ
作品構成にあるのでしょう。

面白さの要素①
「やんちゃぶりが発揮される学園物語」

子どもたちの生活の場はやはり学校。
学校生活が
生き生きと書かれていなければ
児童文学たり得ません。
19世紀アメリカのかなり窮屈な
(現代日本では考えられない
体罰が横行している)学校の中で、
トムは実に自由に
伸び伸びと生き抜いています。

面白さの要素②
「ベッキーとのボーイ・ミーツ・ガール」

転校生の女の子・ベッキーに
一目惚れしたトムの、
男の子としての純粋な一面が
リアルに描かれています。
ベッキーの前で
いいところを見せようとしたり、
嫉妬したりさせられたり。
ベッキーの罪をかぶって
教師から折檻される場面は
天晴れです。

面白さの要素③
「事件の真犯人を告発するミステリー」

児童文学であるはずなのですが、
血なまぐさい殺人事件も登場します。
夜の墓場で目撃してしまった惨劇。
トムが勇気を振り絞って
裁判で証言する場面は
胸のすく思いがします。

面白さの要素④
「キャンプとサバイバルの冒険ストーリー」

トム・ハック・ジョーの三人が
家出をしての離れ小島のキャンプ生活、
そしてトムとベッキーが
洞窟の中で仲間とはぐれてサバイバル。
スリリングな冒険活劇の要素が
2つも盛り込まれているのです。

エンターテインメント
てんこ盛りの面白さ。
子どもの頃、そして若い頃は
このスリリングな展開に
ハラハラドキドキしていました。
同時にトムとハックの破天荒ぶりが、
作者の軽妙な表現で綴られている
面白さを堪能していました。

これこそ究極の
エンターテインメント小説です。
テレビはおろか
ラジオもなかった19世紀の時代、
活字は最高最先端の
メディアだったはずです。
それを今でも十分堪能できます。
児童文学世界最高傑作を、
ぜひ中学校1年生に
味わわせたいと思います。

(2019.1.7)

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